金持ちと乞食

イエスは言いました。「バプテスマのヨハネが現れて教えを説き始めるまで、モーセの律法と預言者たちのことばが、あなたがたの指針でした。しかしヨハネ以後は、神の国の福音が宣べ伝えられ、大ぜいの人がむりにでも入ろうと、押し合いへし合いしています。 しかし、律法の一つでも効力を失ったわけではありません。たとえ天地が滅びようと、律法はびくともしないのです。

だれでも、妻を離縁してほかの女と結婚する者は、姦通罪を犯すことになり、夫に離縁された女と結婚する者も同罪なのです。」

イエスは話を続けられました。「ある金持ちがいました。きらびやかな服を着、ぜいたく三昧の暮らしでした。 ある日のこと、その家の門前に、ひどい病気にかかったラザロという物ごいが横になっていました。 金持ちの家の食べ残しでもいい、とにかく食べ物にありつきたいと思っていたのです。かわいそうに、犬までがおできだらけのラザロの体をなめ回しています。

やがて彼は死にました。天使たちに連れられて行った先は、生前神を信じ、正しい生活を送った人たちのところでした。そこで、アブラハムのそばにいることになったのです。そのうち、あの金持ちも死んで葬られましたが、 彼のたましいは地獄に落ちました。苦しみあえぎながら、ふと目を上げると、はるかかなたにアブラハムといっしょにいるラザロの姿が見えます。 金持ちはあらんかぎりの声を張り上げました。『アブラハム様! どうぞお助けを。お願いでございます。ラザロをよこし、水に浸した指先で、ほんのちょっとでも舌を冷やさせてください。この炎の中で、苦しくてたまりません。』

しかし、アブラハムは答えました。『思い出してみなさい。おまえは生きている間、ほしい物は何でも手に入れ、思うままの生活をした。だがラザロは、全くの無一物だった。それで今は反対に、ラザロは慰められ、おまえは苦しんでいる。 それに、そちらとの間には大きな淵があって、とても行き来はできないのだ。』

金持ちは言いました。『ああ、アブラハム様。それならせめて、ラザロを私の父の家にやってください。 まだ五人の兄弟が残っているのです。彼らだけは、こんな目に会わせたくありません。どうぞ、この恐ろしい苦しみの場所があることを教えてやってください。』

『それは聖書が教えていることではないか。その言うことを聞くべきです。』

金持ちはあきらめません。『でも、アブラハム様。彼らは聖書を読みたがらないのです。ですが、もしだれかが死人の中から遣わされたら、彼らも罪深い生活を悔い改めるに違いありません。』

アブラハムはきっぱり言いました。『モーセと預言者たちのことばに耳を貸さないのなら、だれかが生き返って話したところで、彼らは聞き入れないだろう。』」

ルカ

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